COVID-19


安全で有効な空間除菌機器の選び方
新型コロナ対策|空間除菌

安全で有効な空間除菌機器の選び方

世界の公的保健機関が推奨していない空間除菌

消毒剤や除菌剤などを、人のいる空間へ噴霧することは、人体への安全性や有効性の観点から、世界的に推奨されていません。にもかかわらず、「空間噴霧」「空間除菌」という言葉を謳った商品(以後、「空間除菌機器」と呼びます)が世の中にはあふれています。こうした状況に危機感を覚えましたので、この記事を書いています。

現在、日本で販売されている空間除菌機器の多くは、次亜塩素酸水系と二酸化塩素系に大別されると思います。
二酸化塩素は、私の知る限りでは10年以上も前から、医療関係者が空間噴霧への警鐘を鳴らしてきた除菌剤です。次亜塩素酸水系もかなり古くからありますが、現在出回っているものの多くは、コロナ禍をきっかけに販売する業者が急激に増えたという印象です。

二酸化塩素も次亜塩素酸水も、拭き掃除で適切に使う分には有効ですし、人体にも安全ですが、空気中に噴霧して人が吸い込んでも安全かどうかは、日本ではまだ検証されていないようです。
そもそもどのような化学物質であれ、感染予防として消毒剤や除菌剤を人のいる空間で噴霧することは、世界のどの国でも推奨されていないのです。公的保健機関の公式見解をいくつか見てみましょう。

WHO『COVID-19に関する、環境表面の洗浄と消毒』P.3 消毒剤の噴霧およびその他の非接触方法
"In indoor spaces, routine application of disinfectants to environmental surfaces by spraying or fogging (also known as fumigation or misting) is not recommended for COVID19. One study has shown that spraying as a primary disinfection strategy is ineffective in removing contaminants outside of direct spray zones. Moreover, spraying disinfectants can result in risks to the eyes, respiratory or skin irritation and the resulting health effects."
(著者による簡単な日本語訳:新型コロナウイルス対策として、屋内空間で消毒剤を日常的に噴霧することは、推奨されません。消毒剤を噴霧すると、目や呼吸器、皮膚の炎症など、健康へのリスクが生じる可能性があります)

アメリカCDC『医療施設における消毒と滅菌のガイドライン2008』P.32 空気中の消毒
"Disinfectant spray-fog techniques for antimicrobial control in hospital rooms has been used. This technique of spraying of disinfectants is an unsatisfactory method of decontaminating air and surfaces and is not recommended for general infection control in routine patient-care areas."
(著者による簡単な日本語訳:病室の抗菌手段として、これまで消毒剤の噴霧が行われてきました。しかし消毒剤を噴霧することは、空気や環境表面の消毒としては不十分であり、一般的な感染管理方法としては推奨されません)

厚生労働省・経済産業省・消費者庁による特設ページ 項目5
『厚生労働省では、消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしていません。薬機法上の「消毒剤」としての承認が無く、「除菌」のみをうたっているものであっても、実際にウイルスの無毒化などができる場合は、ここに含まれます』
『これまで、消毒剤の有効かつ安全な空間噴霧方法について、科学的に確認が行われた例はありません。また、現時点では、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認が得られた医薬品・医薬部外品も、ありません』

新型コロナウイルス対策|空間除菌

「感染対策としての空間除菌」3つのポイント

それでもやっぱり「空間除菌でコロナを予防できるんじゃないか」「日本ではまだ認証されていないだけなんじゃないか」と思いたい方も、いらっしゃるでしょう。そこで、購入を検討されている方のために、どのような商品を選ぶべきなのか、私なりのポイントをお伝えします。

「感染対策としての空間除菌」を考えるうえで大切なことは、次の3点です。

  1. 人体への安全性
  2. 微生物への有効性
  3. 空間除菌機器の濃度調節機能

この3点すべてをクリアして初めて、空間に噴霧して安全に予防効果があると言えると思います。どれか1つが欠けてもダメです。既にいくつかの空間除菌機器で、健康被害が報告されていますし、科学的知見から安全性と有効性が証明されている商品を選びましょう。3つのポイントを順番にご説明していきます。

人体への安全性|空間除菌

1. 人体への安全性

空間除菌機器の広告文には、たいがい、「安全です」という言葉が並んでいます。ここでまず注意したいのは、人体のどの部位に対して安全か、ということです。
「食べて安全(消化管や血中での安全)」「触れて安全(肌の安全)」「吸い込んで安全(肺の安全)」「目に入れて安全(目の安全)」は、すべて基準が異なります。たとえば家庭用洗剤は、「触って安全」(せいぜい手が荒れる程度)ですが、だからといって、目に入れていいわけでも、肺に吸い込んでいいわけでもないですよね。
また、食べたり触ったりしたときに、化学物質が人体に触れるのは、比較的短い時間です。食べた場合でも、消化器官によって分解されるまで、長くて数時間程度でしょうか。けれども人の生活空間に噴霧し続ければ、肺は、その化学物質に長期間さらされ続けます。もし老人ホームであれば、寝たきりの方などは、一生さらされ続けるのです。これが、「空間噴霧」に慎重にならざるを得ない大きな要因の1つだと思います。

そのほかに、薬液の濃度も大切です。同じ「食べて安全」でも、化学物質の濃度によっては、安全でなくなることがあります。人体のどの部分であれ、それぞれに「安全な濃度」が立証されているかどうか、公的機関によって保証されているかどうかが、重要です。

次亜塩素酸水であれ、二酸化塩素であれ、そのほかの化学物質であれ、その空間除菌機器で使う薬液の「肺に吸い込んで安全な濃度」を示した商品を選びましょう。一見データを明示しているように思われる商品でも、次のような場合には、安全性に大いに疑問があります。

  • 人体の「どの部位に対する安全性なのか」を明記していない。
  • 「吸い込んで安全」な濃度ではなく、「触って安全」な濃度を表示している。
微生物への有効性|空間除菌

2. 微生物への有効性

次に、その薬液が本当に新型コロナウイルスを不活化できるのかを、確認しましょう。人体に安全な薬液を使用していても、それが新型コロナウイルスの不活化に効果がなければ、そもそも意味がないですよね。それも単に「新型コロナウイルスに有効」というだけでは足りません。その薬液の使用方法と濃度も見てみましょう。「人がいる空間に噴霧して有効な濃度」を確認する必要があります。拭き掃除で効果のある濃度だったり、野菜の洗浄で効果のある濃度では、だめです。また、試験管や密閉されたケースの中で効果があっても、意味がありません。人がいる空間は密閉されているわけではないので、常に空気が動いて薬液の濃度は薄くなっていくと思いますし、気温や湿度などの環境条件にも左右されるからです。 この濃度がわかったら、新型コロナウイルスに有効な濃度と、①の「人が吸い込み続けて安全な濃度」を比べてみましょう。「有効な濃度<安全な濃度」でなければ、危険ですよ!

空間噴霧して効果が現れる時間(効果発現時間)も、必ず確認しましょう。たとえばもし、ウイルスを不活化するのに30分もかかるようでしたら、実用的ではありません。新型コロナウイルスは、感染者の呼気中に存在しています。その感染者と会話したとき、その人の口から吐き出されたウイルスを含むエアロゾルを、他の人が吸い込む前に不活化できる必要があります。せいぜい数秒とか、けっこう短い時間じゃないと無理でしょうね。

空間除菌機器の濃度調節|空間除菌

3. 空間除菌機器の濃度調節機能

さて、 1 2 もクリアし、肺に吸い込み続けても安全で、新型コロナウイルスにも瞬時に効果がある薬液が、仮に存在するとしましょう(私は見たことも聞いたことがありませんが)。実はいちばんの問題は、空間除菌機器の濃度調節機能ではないかと思います。
2 のところでも少し説明しましたが、人がいる空間では、薬液の濃度を一定に保つのは、非常に難しいです。部屋の広さ、換気量、室内の人数、感染者の人数とウイルス排出量、そのほかの微生物の量などなどによって、かなり左右されます(薬液中の有効成分は、微生物に作用すると、化学反応によって違う物質になってしまうので、濃度が低下していきます)。

人体に安全である濃度を保とうとすれば、ある一定の濃度「以下」でなければなりません。一方、新型コロナウイルスに有効な濃度を保とうとすれば、ある一定の濃度「以上」になるように調整する必要があります。これを両立させるためには、噴霧される薬液の流量が一定ではだめで、何らかのセンサーで常に室内をモニタリングし、空間内の濃度を一定に保ち続ける必要があると思います。どちらか一方の機能だけでは、十分ではないのです。このため、空間除菌機器の購入を検討する際には、薬液の安全性と有効性だけでなく、噴霧流量の調節をどのようにしているのかも、必ずチェックしてください。

3つのポイントをまとめておきます。

ポイント 確認する点
①人体への安全性 ・人体のどの部位への安全性か
・安全な濃度
②微生物への有効性 ・どの使用方法か
・有効な濃度
・有効な濃度 < 安全な濃度 か
・効果発現時間
③空間除菌機器の濃度調節機能 ・室内濃度のモニタリング機能
・薬液の流量調節機能

新型コロナ感染対策|空間除菌

専門家による見解

さて、このように1つ1つ見ていくと、そんな都合のいい商品はなかなか存在しないということを理解していただけるかと思います。空気中の新型コロナウイルス対策としては、今のところ、換気がもっとも有効です(しかも安上がり)。それから、マスクの着用
既に、体操国際競技会や代々木公園のスペインフェスティバルで空間除菌機器を使用し、批判が集まっていますよね。私は今のところ、上記3つのポイントをクリアした商品を見つけられていません。もしあったら、ぜひ、教えてください。ノーベル化学賞とノーベル平和賞のダブル受賞も夢じゃないかも!

最後に、専門家による見解をいくつかご紹介しておきましょう。

感染症専門医・忽那賢志
「消毒剤噴霧」「空間除菌」の効果は証明されておらず、人体に有害な可能性あり

東京医療保健大学名誉教授・大久保憲
市販の二酸化塩素製剤の殺菌効果と人体への安全性は?

公益社団法人日本薬剤師会理事・村松章伊市
Q&A 二酸化塩素による除菌等をうたった製品の使用について

BuzzFeed Japan
除菌液のミストシャワー、「健康に害も」

新型コロナ感染対策|加湿器

加湿器として使えるの?

このページを読んで、「えー!もう買っちゃったよ」という方も、いらっしゃるかもしれませんね。実はクロネコの周りにも、空間除菌機器を購入してしまった方がいます。人体への安全性を確認できず、結局、使用を中止されていましたが、「今後は水を入れて加湿器として使用しようかな」とおっしゃっていました。空間除菌機器を加湿器として使用することに、問題はないのでしょうか?

もし、買ってしまった空間除菌機器を、ただの加湿器として使用したいと思ったら、まずフィルターの有無を調べてください。商品によりますが、加湿器は一般的に、カビが発生しやすい器械です。このため、器械に付着したカビを部屋中にまき散らさないために、フィルターがついているものが多いと思います。このフィルターをこまめにお手入れする必要があります。洗えるタイプのものもあれば、フィルター自体を交換するタイプのものもあります。適切なお手入れを怠ると、かえって健康によくないですよね。
ところで空間除菌機器は、もともと「除菌剤」を入れることを想定して作られています。除菌剤を使用している限りではカビが発生しにくいため、どうもフィルター機能のない商品が多いような気がします(あくまでも、クロネコの知っている範囲で受けているイメージです)。
もしフィルター機能がない場合には、カビが発生しないようにどのようなメンテナンスが必要なのか、確認しましょう。水の通り道(タンクから吹き出し口までの経路)をすべて洗えるようなものだったらいいですね。

空間噴霧しても人体に安全な濃度で使用できるものであれば、もとの薬液を使っても大丈夫かもしれません。水を入れるよりは、カビの発生を抑えられると思います。感染予防としての効果は期待できないけれど。たぶん感染対策にならないのに、カビの発生を抑えるためだけに、その薬液を買い続けるかどうかは、人それぞれだと思います。

それから、加湿しすぎると、今度は室内にカビが発生しやすくなります。窓付近や家具の背面になっている壁(本棚の後ろとか)、部屋の角などが、危険地帯。特に下の方が水分が溜まりやすいので、要注意です。

このように考えていくと、単に加湿器といっても、メンテナンスやら、湿度調整やら、わりと面倒くさくないですか?温度と湿度を調整できるエアコンが、いちばん楽な気が・・。もっともエアコンもカビやすいので、クロネコ宅では、数年おきに分解掃除をしてもらっていますけれどね(1台2万円弱と、けっこうな高額で手痛い出費)。

新型コロナ感染対策|空間除菌機器

空間除菌機器の健康被害

実は、空間除菌機器を使用したことによる健康被害が、既にいくつか報告されていますので、私が見かけたケースをお伝えしておきましょう。

次亜塩素酸水系

日本医学放射線学会 第56回秋季臨床大会において、次亜塩素酸水を噴霧していた人が肺障害で入院したケースが報告されたそうです。

Twitter 画像診断医k
次亜塩素酸水噴霧による急性過敏性肺炎

二酸化塩素系

これは医療関係者の間では有名な事件で、首下げ型商品が原因で乳幼児が皮膚損傷という事故が、2013年に発生しています。記事を読むとわかりますが、この商品表示は「次亜塩素酸ナトリウム」となっていたのですが、調べたところ、実際には二酸化塩素を使用していたとのこと。極めて悪質な例ですね。

地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所
空間除菌グッズの健康被害事例と行政措置命令

更新:2020年12月5日

今回のイチオシ店! Fattoria S(ファットリーア エッセ)

〒351-0114 埼玉県和光市本町5-9 イルピーノ1F

048-465-1562

営業時間
基本的に予約制(要電話確認)
【昼】11:30~14:30(ラストオーダー13:30)
【夜】18:00~22:00(ラストオーダー20:30)

定休日
月曜日(祝日の場合は翌日)
月1回不定休予定

席数
テーブル席:28席 / カウンター席:4席

現在、新型コロナウイルス感染予防のため、人数制限や換気、消毒用アルコールの設置などの対策を行っています。

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